世界精神保健調査日本調査 (World Mental Health Japan Survey, WMHJ)
精神保健の疫学は、地域や職場、あるいは患者集団において精神障害の頻度や関連要因、受診行動を解明する研究領域であり、精神障害の診断分類を改善するために、精神障害の第一次、第二次、第三次予防の方法を確立するために、精神保健福祉の政策立案のために、とても重要です。WHOとハーバード大学医学部が中心となって世界精神保健調査(World Mental Health, WMH)が実施されています。この調査は26カ国、合計13000人を対象とする大規模な国際共同研究です。
このWMHの日本調査が厚生労働科学研究費による「こころの健康についての疫学調査」(通称WMHJ)です。WMHJでは、山形県から鹿児島県までの合計11地域の20歳以上住民を対象として、WMH-CIDIと呼ばれる最新の精神科構造化面接による調査を行っています。これまでの調査から、過去12ヶ月間に何らかの気分、不安、物質使用性障害を経験した方は8.8%、うつ病を経験した方だけでも2.9%みられること(Kawakami
et al 2005)、過去12ヶ月間のうつ病の経験者のうち、精神科医に受診した人は14%、心理職に相談した人は14%、一般医に相談した人は9%であり、7割強の人は医療機関に相談していないことがわかりました(Naganuma
et al. 2006)。さらに詳しい分析を行うことで、精神障害について、さまざまな新事実が解明されることが期待されます。
平成18年度厚生労働科学研究費こころの健康科学研究事業
「こころの健康についての疫学調査」
主任研究者 川上憲人(WMHJ技術支援センター)
厚生労働科学研究費による「こころの健康についての疫学調査」HP
http://www.ncnp-k.go.jp/dkeikaku/epi/index.html
平成14年度厚生労働科学特別研究「心の健康問題と対策基盤の実態に 関する研究」報告書
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/h14tokubetsu/
WMHおよびWMHJからの最近の公表論文
WHO World Mental Health Survey Consortium. Prevalence, severity, and unmet
need for treatment of mental disorders in the World Health Organization
World Mental Health Surveys. Journal of American Medical Association (JAMA)
2004; 291: 2581-90.
Kawakami N, Takeshima T, Ono Y, Uda H, Hata Y, Nakane Y, Nakane H, Iwata
N, Furukawa T, Kikkawa T. Twelve-month prevalence, severity, and treatment
of common mental disorders in communities in Japan: A preliminary finding
from The World Mental Health Japan 2002-2003. Psychiatry Clin Neurosci.
2005; 59(4):441-52.
Naganuma Y, Tachimori H, Kawakami N, Takeshima T, Ono Y, Uda H, Hata Y,
Nakane Y, Nakane H, Iwata N, Furukawa TA, Kikkawa T. Twelve-month use of
mental health services in four areas in Japan: Findings from the World
Mental Health Japan Survey 2002-2003. Psychiatry Clin Neurosci. 2006; 60(2):240-8.