COVID-19パンデミック時の医療従事者において、COVID-19感染者の対応の決断とPTSD症状の関連を示した研究

COVID-19パンデミック時の医療従事者において、COVID-19感染者の対応の決断とPTSD症状の関連を示した研究

COVID-19のパンデミック中に、医療従事者は患者が生命の危機に瀕しながらも助けることができない状況の中、患者のために決断を迫られる苦しみを経験しました。このような経験は医療従事者にとってトラウマ的な出来事となり、PTSD症状(心的外傷後ストレス症状)を発症する可能性がありますが、これまでの研究ではCOVID-19感染者の対応の決断とPTSD症状の関連は明らかにされていませんでした。

東京大学大学院医学系研究科精神保健学・精神看護学分野では、2021年5月から6月にかけて災害派遣医療チーム(DMAT)および災害派遣精神医療チーム(DPAT)に所属する医療従事者を対象とした調査を行いました。その結果、参加者の約3人に1人(33.4%)がCOVID-19感染者の対応の決断を経験していました。COVID-19感染者の対応の決断を経験した人は、経験をしていない人よりもPTSD症状が深刻である結果が示されました。

本研究結果より、COVID-19感染者の対応の決断はCOVID-19パンデミック中に経験率が高く、パンデミック中の医療従事者にとっては深刻なトラウマ経験であることが示されました。COVID-19パンデミック中にCOVID-19感染者の対応の決断の経験をした医療従事者には特にメンタルヘルスへのケアや支援が必要であると考えられました。

この研究はEnvironmental and Occupational Health Practiceに2022年11月25日付で掲載されました。
Asaoka H, Koido Y, Kawashima Y, Ikeda M, Miyamoto Y, Nishi D. Association between clinical decision for patients with COVID-19 and post-traumatic stress symptoms among healthcare professionals during the COVID-19 pandemic, Environmental and Occupational Health Practice, 2022, Des 425;(1). doi: 10.1539/eohp.2022-0018-OA

 


このページは、厚生労働行政推進調査事業費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「国土強靭化計画をふまえ、地域の実情に応じた災害医療提供体制に関する研究(研究代表者:小井土雄一、研究期間:令和元年度~令和3年度)」「大規模災害時における地域連携を踏まえた更なる災害医療提供体制強化に関する研究(研究代表者:小井土雄一、研究期間:令和4年度~令和年度)」の西大輔(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)分担班の研究成果を掲載しています。