日本語版Professional Fulfillment Indexを開発し、信頼性と妥当性を検証した研究
燃え尽き症候群(Burnout:バーンアウト)は、医療従事者において深刻な問題です。バーンアウトを測定するための尺度としてMaslach Burnout Inventory等がありますが、それらの尺度では医療従事者のバーンアウトを適切に測定するには限界があることが報告されています。2018年に米国でProf. Mickey Trockelらによって、医師等の医療従事者の仕事上の充実感やバーンアウトを測定するProfessional Fulfillment Index(PFI)が開発され、国際的に広く用いられています。
東京大学大学院医学系研究科精神保健学・精神看護学分野では、PFIの原版(英語版)作成者の承諾を得て日本語版の開発と、2022年10月から11月にかけて災害派遣医療チーム(DMAT)および災害派遣精神医療チーム(DPAT)に所属する医療従事者を対象とした調査を実施し、日本語版PFIの信頼性と妥当性を検証しました。その結果、日本語版PFIは、原版と同じ3因子構造(仕事上の充実感、バーンアウト:仕事による消耗、バーンアウト:対人関係の遮断)の尺度として、高い内的整合性、構造的妥当性、収束的妥当性を示し、日本の医療従事者を対象とした尺度として信頼性と妥当性が示されました。
日本語版PFIは、医療従事者のバーンアウトと仕事上の充実感の両方を測定が可能であるとともに、国際比較が可能な尺度として、活用することが可能です。
この研究はJournal of Occupational Healthに2023年9月28日付で掲載されました。
日本語PFIは研究目的であれば、下記の論文を引用していただくことで、無料で使用することができます。
Asaoka H, Sasaki N, Koido Y, Kawashima Y, Ikeda M, Miyamoto Y, Nishi D. Reliability and validity of the Japanese version of the Professional Fulfillment Index among healthcare professionals: A validation study. J Occup Health. 2023;65(1):e12422. doi:10.1002/1348-9585.12422
原版PFIの開発論文は下記となっています。
Trockel M, Bohman B, Lesure E, Hamidi MS, Welle D, Roberts L, Shanafelt T. A Brief Instrument to Assess Both Burnout and Professional Fulfillment in Physicians: Reliability and Validity, Including Correlation with Self-Reported Medical Errors, in a Sample of Resident and Practicing Physicians. Acad Psychiatry. 2018;42(1):11-24. doi:10.1007/s40596-017-0849-3
日本語版尺度のダウンロードページ
Professional fulfilment Index 日本語版
このページは、厚生労働行政推進調査事業費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「国土強靭化計画をふまえ、地域の実情に応じた災害医療提供体制に関する研究(研究代表者:小井土雄一、研究期間:令和元年度~令和3年度)」「大規模災害時における地域連携を踏まえた更なる災害医療提供体制強化に関する研究(研究代表者:小井土雄一、研究期間:令和4年度~令和年度)」の西大輔(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)分担班の研究成果を掲載しています。